【Klaxon/猪狩蒼弥】深読み

 

 

 

この内容は全てわたしの解釈であり猪狩本人の思考とは全くの別物としてご覧頂けると幸いです。

 

 

 

 

 

チルアウトというのはスローテンポで落ち着いた音楽のジャンルのことを指す。

ダンスによって火照った体を休めるために作られゆったりとした明るい曲調が特徴である。

それを大前提として話を進めていく。

 

 

 

 

【Klaxon】

 

この曲の曲名であるが日本語で訳せば警笛の事である。

自分の存在を他のものに知らせる警告音。

イメージとしては決して良いものではない。

歌詞を読み進めていくと感じるがこの段階ではあまりプラスのものではない。

 

 

 

歌詞に関しては本人同様誰かがまとめてるくれているのをチェックしてほしい。歌詞を知っているていで早速解釈をしていく。

 

 

 

 

頭のまるで夢から出てきたような感覚の部分。

フワフワしているような夢と現実の間であるような表現を続くから感じることができる。

その後のlike a lighter

そして一輪の花に静かにFire

この2つを重ねることで煙草を思わせるような表現を作り出す。

煙草にはストレスを軽減させるといった効果があるが気持ちを落ち着かせなくてはいけないことでもしてしまったのだろうか。

 

Highwayみたく流れるMyLife

高速の様に早く過ぎてしまう日々の中で恐らく答えが定まらないまま生活してしまっているのだろう。

そしてここで登場する金魚

金魚は縁起がいいものとされており幸運を呼ぶともされている。

 

少し話を戻すが先ほどのFire金魚

共通するのが赤いものであるということ。

赤は危険を連想させる性質があり警告色として知られているのは言うまでもない。

つまりここで使われる金魚がもたらす効果としては後者の警告の方が当てはまると言える。

 

ピントをずらしぼかすの部分では現実から目を逸らしている。

そして星が流れ=流れ星と捉えるとすると流れ星は星屑でできているとされあまり良い印象としては受け取れない。

 

 

 

ここまでで猪狩が書く詞としては珍しくマイナスでありネガティブなものであると感じられる。

 

 

 

孤独が怖くて失うHOME

失いたくなく言えないNo

思っていても口にしてしまえばきっと自分の居場所がなくなってしまうからなかなか言えない葛藤を思わせる。

それによって望んでなかった虚像、つまり自分が描いていたものとは違う現実に悩むことになるのである。

hypeには詐欺や騙すといった意味がある。

また俗語(日常会話に用いる言葉)としては麻薬常用者(=hypodermicの略)という意味も持つらしい。

 

ここまでが夜中であり次の歌詞からは翌日であるとみられる。

 

 

帰り道の話だろうか。

先程孤独が怖いと言ってたのにもかかわらず一人きりの帰路

孤独は嫌なのに一人で居ることに若干の矛盾を感じる。

HEROという言葉には英雄、主人公といったプラスの意味が込められ昨日の自分と比べて少なくとも良いものになっていると捉えられる。

ここで自分を棚に上げているのではないかと感じられる。

一度自分は間違ってないと言い聞かせることで自分を落ち着かせ平常心を保っているようにもみえる。

 

しかし火のないところに煙が立つ日々で再び警告色が登場しその後の大火事火事でそれを強く印象付け話が展開していく。

真実であるか分からないことが独り歩きし噂が伝わり対岸の火事、他人事であるが為に勝手に盛られた話は大火事になっていくのである。

 

捨てちまった匙

『匙を投げる』という言葉を言い換えたのであるとすれば諦めたという意味を持たせることができる。

その時点で自分はとっくに噂が広まることに対して諦めがついている様に捉えられる。

 

指切りには約束するという意味が込められる。

しかしその後の飲む針

針を飲むという行為にはそれを裏切ったという意味が込められるとすると途中他人から裏切られているのではないだろうか。

 

壁打ちは一人でするものとされているが他にも答えは求めずただ話を聞いてほしいという意味もあり一人で苦しんでいる様子が見られる。

また誰かの掌で踊るの部分では他人の思い通りに動かされているのではないかと自分すら信じられずにいる様子も伺える。

 

ここで一度他人目線の離れて見てれば苦難は簡単という詞が入るのだが側から見れば答えはすごく簡単なのにプライドのせいで空回りしていること思わせる。

恐らく冒頭の歌詞であった様に他人の目を気にして自分の思いを口に出来なかったことを引きずっているのだろう。

 

言い訳には自分を正当化する為に事情を説明することという意味が、本音には本当のことや真実という意味がある。

言い訳する時は良い内容であるとは言えない為、嘘と本音として対比されていると言える。

つまり嘘と本音は紙一重である。

 

他人には簡単だと思われているものでも自分はそんな安いものになってたまるかというまだ捨てきれないプライドが見られる。

ここで見られるのは自分と他人のギャップである。

 

 

 

Siren Klaxon

言葉は違うが意味は曲名のKlaxonと同様警笛である。

落ち着いた様に見られたがまたここで警告色が使われている。

Midnight、つまり深夜。再び夜中の話である。

一日経って治った様に見えたがそれは自己解決であり結局現実的には変わらなかったことに気付きまた焦り始める自分。

 

掻き消し結果掴めない実態

振り返れば消せない失敗

やり直せるならもう一回

続くこの詞が後悔を感じさせる。

 

Silent=無音

Station=停車場

ここでやっと自分の動きを止めるのである。

ここまで何度も何度も警笛が鳴っていたにも関わらず止まらなかった自分を見つめ直す。

 

理想は自分が考える中で最も完全なものであるがFashion、つまり見た目や表面上のものである。

 

そしてアクセル踏んでから鳴らすKlaxon

警笛は先に鳴らすものであるがこの語列では物事が始まってから警笛が鳴っている様に受け取れる。

自分は手遅れであることを理解しここで開き直るのである。

 

 

 

ここまでで起承転結の起・承・転まで進んできた。

『起』では何かをやらかし、『承』では他人の目を気にするが自己解決し一度落ち着いたと見せ、『転』でやはり不安を感じ自分の過ちに気付く。

さてここからがクライマックスである『結』である。

 

 

 

開き直ることができた自分はやってしまったことに対してある程度諦めがついたことによって少し気持ちが楽になる。

ここで急に詞に使われる言葉が優しくなっている。

 

昨日に戻って変える未来

明日の悩みが消えてくGood Day

痛みの行く先自分次第

正直になってつける白黒

やってしまったことを受け入れることで悩んでいた時とは違うことを感じさせる。

結局自分次第で明日(未来)は変わるのである。

 

またここで朝日が使われているが先ほどまで使われていた警告色である赤とは違い優しく包み込む様な温かみの赤を想像させやっと穏やかな自分に戻る。

 

巨像と蟻

本当は巨象とアリという言葉で使われ大差があることを指すが上手く言い換えられている。また途中にある望んでなかった虚像と掛けてあるのも上手い。

 

遮る全てというのは恐らく周りの目やプライドの高い自分などここまで出てきた全てのマイナス要素を指すと思われる。

その全てのものにKlaxonを鳴らし次への一歩を踏み出したのではないだろうか。

 

 

(しかし正直なところ最後の演出と解釈が一致しないのが気になる。初日二公演しか観れていない為なんとも言えないがフードを被って終わることに前向きな要素を感じられない。結局腐って終わってしまったような気もする。)

 

 

【Klaxon】

 

冒頭の説明では警笛のことであると説明した。

実はKlaxonという単語自体和製英語(日本で生まれた英語)であることをご存知だろうか。

また海外では何かを応援するときや感謝を伝える為の行為でもあるとされその文化は日本でも少しずつ浸透してきている。

偶然であるかもしれないが一つの言葉に二つの意味を持たせているのは凄いことである。

 

 

 

 

 

ここからは少し余談であるが演出で使われていたトランプについて話したい。

 

猪狩は毎回細かなところまで演出に力を入れる為、ひとつひとつのものに意味があるのではないかと思いトランプについて少し調べてみることにした。

すると次のような面白い記事を見つけた。

 

トランプには赤と黒2種類の色があるが

赤=昼、黒=夜

を表すとされている。

また、

クラブ=春、ダイヤ=夏、ハート=秋、スペード=冬

を指し、それぞれ13枚ずつ計52枚になる。

一年間は52週間である。

また1〜13を足すと91になり91×4(組)=364日。

364+ジョーカー1枚=365(日)。

(エキストラジョーカーを足すと366(日)になり閏年)

 

このように偶然であると言われているがトランプには一年を表す意味がある。

今回自分がした解釈が日常生活の中で起こりうることであった為、少し繋がるものを感じた。

 

またトランプという単語も和製英語でありTrumpを和訳すると『切り札』という意味になるらしい。

 

 

 

 

最後の切り札

最後の警告。

 

 

 

 

ここまでまとまりがない勝手な解釈になってしまったが本人の口から詞についての解説がない。

去年のFenceについてはテーマでさえもちゃんと触れられてない。

だからこそ猪狩のラップは面白い。

正解がないからこそ何度でも解釈し自分なりの意味を見出すことができる。

ラップに限らず振付、構成、プロデュースするもの全てがまだ全然噛み砕けないから面白い。

 

 

 

2020夏。

今年も猪狩には敵わなかった。